商品説明
日蓮(1222-1282)が書き遺した著作や書簡、図録など(=遺文、御遺文、御書)などのうち、真蹟(真筆)であることが裏づけられる282篇について逐一解説したもの。主要著作だけでなく、普段はあまり顧みられることのない遺文までも繙くことを通して、日蓮の思想的全体像を明らかにしようとする試み。解説は1篇ごとに「読み切り」のため、辞書的にも活用できる。序論として日蓮遺文および日蓮思想の概説(写真8点付き)、巻末に参考文献・日蓮年譜・遺文索引を付す。
■編集者コメント
仏教の勉強を始めた人が、日蓮聖人の「四箇格言(しかかくげん)」に出会うと、たいてい皆びっくりします。四箇格言とは「念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊」の四句をいい、日蓮聖人が諸宗を批判したものです(但し、この四箇格言は日蓮聖人による命名ではなく、また遺文中に出る頻度も僅少なのだそうです。『日蓮宗事典』143頁「四箇格言」項より)。
なぜ日蓮聖人は、この四句を書き記されたのでしょうか。そこには、あの時代(13世紀、末法の世)の、あの場所(インド・中国から遠く離れた日本)においては、あの仏(釈迦仏)とあの経典(『法華経』)へ帰依する以外に悟りや救いへの道はないという信仰的確信があったからでありましょう。
その日蓮聖人は、この「四句」以外にどのようなものを書き遺されているのでしょうか。『立正安国論』などの論文のほかに、手紙なども多くあると言われますが、誰に、何を、どのような表現で伝えようと記されたのでしょうか。
――本書『全篇解説 日蓮聖人遺文』をとおして日蓮聖人のバラエティーに富む遺文に触れていただき、そして最終的には『日蓮聖人全集』(新装版、全7巻、春秋社)や『昭和定本 日蓮聖人遺文』を手にとって、じかに日蓮聖人と〈出逢って〉いただけたらと思います。
■目次
《目次》
まえがき
序論
第一節 日蓮聖人遺文とは
日蓮聖人遺文の定義
日蓮聖人遺文の種類
日蓮聖人遺文の伝来(一) ~真蹟遺文~
日蓮聖人遺文の伝来(二) ~写本遺文~
日蓮聖人遺文の伝来(三) ~刊本遺文~
日蓮聖人遺文の注釈書
第二節 日蓮聖人はインドの宗教思想、中国の儒教思想をどのように受容したか
はじめに
日蓮聖人の思想と中国の儒教思想
日蓮聖人の思想とインドの宗教思想
『立正安国論』の奏進と諸天善神の守護
本論
第一節 日蓮聖人遺文を代表する「五大部」執筆の背景
『録内御書』『録外御書』の伝説と、今に至る『御書』(御遺文)研究について
比叡山遊学時代の研鑽
『立正安国論』の著作と幕府への進献
『立正安国論』提出後の日蓮聖人に対する弾圧
『開目抄』に展開された『立正安国論』のこころ
『如来滅後五五百歳始観心本尊抄』に顕された「未来記の法華経」のこころ
蒙古来寇におののく信徒への誡めの書=『撰時抄』
恩師道善房への『報恩抄』
「五大部」に展開された『立正安国論』のこころ
第二節 日蓮聖人遺文解説
あとがき
参考文献
日蓮聖人年譜
日蓮聖人遺文索引
■著者プロフィール
【渡邊寶陽(わたなべ・ほうよう)】
昭和8年(1933年)、東京に生まれる。立正大学仏教学部宗学科卒業、立正大学大学院博士課程単位取得。文学博士。立正大学仏教学部教授、立正大学学長などを歴任。立正大学名誉教授。法立寺(東京都足立区)前住職。おもな著書に『日蓮宗信行論の研究』(平楽寺書店)、『日蓮仏教論――その基調をなすもの』(春秋社)、『宮澤賢治と法華経宇宙』(大法輪閣)などがあるほか、共著書および編著書、論文が多数ある。
【関戸堯海(せきど・ぎょうかい)】
昭和33年(1958年)、東京に生まれる。立正大学仏教学部宗学科卒業、立正大学大学院博士課程単位取得。博士(文学)。立正大学仏教学部専任講師、身延山大学仏教学部助教授、日蓮宗宗務院教学課長などを歴任。妙幸寺(東京都大田区)住職。おもな著書に『日蓮聖人教学の基礎的研究』(山喜房佛書林)、監修本に『立正安国論ノート』(東方出版)などがあるほか、共著書および編著書、論文が多数ある。
【高森大乗(たかもり・だいじょう)】
昭和41年(1966年)、東京に生まれる。國學院大学文学部史学科および立正大学仏教学部宗学科卒業、立正大学大学院博士課程単位取得。立正大学日蓮教学研究所研究員、立正大学仏教学部准教授などを歴任。現在、要傳寺(東京都台東区)住職、立正大学日蓮教学研究所客員所員、東京都台東区教育委員。編集本に『昭和定本日蓮聖人遺文諸本対照総覧』(山喜房佛書林)があるほか、共著書および編著書、論文が多数ある。
備考
備考